日本の秋雨の中で、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培する
「秋に雨の多い日本で、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培すること」
カベルネ・ソーヴィニヨンは世界の様々なワイン産地においても栽培することが難しい品種の一つです。
特に秋に雨の多い日本では、晩熟の品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンは病害のリスクが高まるため、完熟するまで待つことが難しく、良いワインをつくることがとても難しい品種です。実はそれが日本ワインにカベルネ・ソーヴィニヨン単体のワインが少ない理由の一つでもあります。
「ソラリス」シリーズのカベルネ・ソーヴィニヨンのワインは、私たちマンズワインが、カベルネ・ソーヴィニヨンに40年以上、繰り返した試行錯誤と挑戦の結晶です。
先人たちの栽培適地探し、栽培技術の積み上げにより高めてきたクオリティをさらに高めていくため、2017年ヴィンテージから新たな取り組みを開始し、それは現在も継続しています。
海外産地の模倣ではなく、日本のテロワールを追求するソラリスのカベルネ・ソーヴィニヨン。
その現在地を是非、感じていただけたら嬉しいです。
小諸ワイナリー 栽培・醸造責任者
西畑 徹平
マンズワインのカベルネ・ソーヴィニヨンへの取り組み
「ソラリス 千曲川 カベルネ・ソーヴィニヨン」は2001年の「ソラリス」シリーズ立ち上げ時からラインアップされている、私たちにとっても思い入れのある一品です。このキュヴェが現在の品質を実現できているのは、これまで様々な取り組みを積み重ねてきたからに他なりません。
適地探し
1962年の創業以来、日本で育てたぶどうでより品質の高いワイン造りを目指してきたマンズワインは、1970年代にはヨーロッパ系品種への取り組みについて具体的に検討していました。その取り組みはソラリスの初代醸造責任者・松本信彦(現・常任顧問)がフランス・ボルドー大学栽培醸造学部への派遣留学から帰国した1978年以降、さらに本格的になります。「日本の地でカベルネ・ソーヴィニヨンを」という想いを抱き、山梨市万力山の標高約700mの斜面にあり、昼夜の寒暖差が大きい万寿農場で栽培をスタートしました。そして1984、85、86、87年のたった4ヴィンテージのみリリースされ、今では「幻のカベルネ」とされる「万寿農場カベルネ・ソーヴィニヨン」は日本で栽培して造った本格的なカベルネ・ソーヴィニヨンの先駆けとなりました。
その後、万寿農園は閉鎖され、新たな適地を求めての取り組みが始まりました。次に栽培したのは山梨県旧東八代郡豊富村の標高約300mにある畑で、ここでは色づきが悪くロゼのようなワインしか出来ませんでした。そして次に求めた地が小諸ワイナリーのある長野県の千曲川流域でした。標高約600mの小諸では気温が低すぎて完熟しなかったため、100mほど標高の低い上田市塩田平地区でぶどう苗の植え付けが行われました。1992年のことです。初めて収穫したぶどうを見た松本は「ボルドーで見たカベルネ・ソーヴィニヨンにそっくりだ。これは良いワインが出来る。」と感じたといいます。適地として確信を得て1994年には塩田平にある東山地区での植え付けが行われました。この東山の畑はソラリスのトップレンジ「東山 カベルネ・ソーヴィニヨン」を生むとともに、「千曲川 カベルネ・ソーヴィニヨン」にも使用されています。現在では日本におけるカベルネ・ソーヴィニヨンの最適地の一つとして認知され、周辺に多くのワイナリーが進出してくるようになっています。
栽培技術
晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンは、日本では収穫期が台風や秋雨の時期と重なるため病害のリスクが高く完熟まで持っていくのが難しい品種です。多くのヴィンテージでこれ以上待つと病害でやられてしまうという状況から「あきらめの収穫」を迫られることがありました。マンズワインではこの「あきらめの収穫」をせずに安定して完熟したぶどうを得るために、「マンズ・レインカット栽培法」を開発しました。垣根上部をビニールで覆うことで雨がぶどうにあたりにくくなり、病害の発生リスクを大きく低下させるため、ぶどうが理想的な熟度に達するまで待ってから収穫することが可能になったのです。
栽培の中で、ぶどうの凝縮感を向上させるための取り組みの一つがグリーンハーベスト(摘房)による収量制限です。ぶどうが色づく8月頃に、品質の高いぶどうの房を残し他の房を落とします。残った房は、より凝縮感のある高品質なぶどうになります。このグリーンハーベストでは約1/3のぶどうを落とし、トップレンジではさらに厳しく約2/3を落とします。
収穫~仕込・醸造
ぶどうはまず収穫の段階で厳しく選別します。カビや病気の実はもちろん、一見健全そうでも茎が枯れて養分が十分にいきわたっていない実等も排除します。一房一房注意深くチェックをして完熟したぶどうのみを収穫していきます。
さらに仕込前の選果台では10人程のスタッフで畑では取り除けなかった健全ではない粒や、さらには一粒一粒についている5mmほどの梗(茎)を取り除きます。非常に手間のかかる作業ですが、この二段階のチェックを経ることでワイン造りに理想的な粒だけをタンクに送ることが出来、結果として雑味のない、澄んだ味わいのワインを造ることが出来ます。
西畑が考えるカベルネ・ソーヴィニヨンのワイン、
そして2017年からのさらなる品質向上への取り組み
あまり語られない重要な要素「果実味」
「カベルネ・ソーヴィニヨンは渋味のもととなるタンニンが重要、とよく言われますが、私はそれと共に、そこに果実味がしっかりとあることがとても重要と考えています。」
栽培・醸造責任者の西畑が考えるこのコンセプトは簡単に実現することは出来ません。
果実味を高めるためにはぶどうの熟度を最大限高める必要があります。私たちには、収穫期の台風や秋雨による病害を乗り越え、完熟まで待ちきれることを可能にする「マンズ・レインカット栽培法」があります。さらに西畑自身、これまで以上に畑とぶどうに寄り添い、そして完熟して果実味に溢れるぶどうでワインを造ることに心血をそそいでいます。
さらなる品質向上への取り組み「選定」
2017年ヴィンテージから、これまで以上に品質を向上させる取り組みが始まっています。
それがぶどうの「選定」です。収穫するぶどうがソラリスに相応しいかどうか、それは栽培・醸造責任者により判断されます。西畑は、収穫したぶどうを「ソラリス」シリーズのどのレンジに使用するかの判断基準を一層厳しくすることで、これまで以上に高い品質のワイン造りを実現しました。
区画ごとに異なる味わいを見せる「東山」
上田市東山地区の圃場では、新しく植え付けを行った区画の収穫も出来るようになってきたことで、選択の幅が広がってきました。東山地区と一言で言っても、区画ごとに土壌も日当たりも植栽の方向や間隔等も異なり、100m違っただけで味わいにも差がでてきます。今まで以上に品質の高いキュヴェを中心にセレクトすることが出来、また区画ごとのテロワールも表現出来るようになりました。これまでの徹底した品質向上への取り組みの経験、技術が積み上がっていることで、様々な選択肢を持てるようになったこともソラリスの進化の一つと言えます。
マンズワインのカベルネ・ソーヴィニヨンのラインアップ
- 納得できる品質のものができたヴィンテージのみリリースするトップキュヴェ
「ソラリス 東山 カベルネ・ソーヴィニヨン」 - 千曲川流域の日本ワイン、カベルネ・ソーヴィニヨンのスタンダード
「ソラリス 千曲川 カベルネ・ソーヴィニヨン」
- カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをアッサンブラージュしたソラリスの最高峰
「ソラリス マニフィカ」 - 東山の単一畑のカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをアッサンブラージュ
「ソラリス ラ・クロワ」 - カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをアッサンブラージュした若いうちから楽しめる
「ソラリス ユヴェンタ」
- ソラリスと同様の栽培管理をしたぶどうを搾ったストレート果汁
「カベルネ・ソーヴィニヨン ぶどうジュース」