ソラリスの新たな挑戦
その土地のテロワールを表現する「ソラリス ル・シエル」

ソラリス 栽培・醸造責任者 西畑の想い

誕生から20年以上お客様からご愛顧いただいている「ソラリス」シリーズ。
常に進化を続けるソラリスは、味わいの良さはもちろんのこととして、近年はより日本のテロワール、その土地・畑の個性を表現することに取り組んでいます。
ル・シエルは、小諸の土地のテロワールを表現することを目指し、3つの品種の混醸(フィールドブレンド)にチャレンジしています。
まだ収穫日の決定なども試行錯誤で、永年この畑を見てきた経験と感性を頼りに行っている段階ですが、今まで発売したヴィンテージにはそれぞれ違う表情(ヴィンテージ由来)と共通のニュアンス(土地由来)があり、テイスティングする際はいつも楽しませてくれています。
ル・シエルは、是非、ヴィンテージごとの違いも楽しんでいただきたいワインです。
また、熟成による発展性も未知数ではありますが楽しみなワインですので、これから長い目で見守っていただければ幸いです。

小諸ワイナリー 栽培・醸造責任者
西畑 徹平

「小諸」という土地、テロワールの表現

(小諸ワイナリーに隣接するル・シエルの畑)

醸造方法として「混醸」を採用

新たに混醸にチャレンジしたのは、品種毎ではなく、その土地・区画のぶどう全体の最適なタイミングで収穫し、より長い時間共に育てることによって得られるアッサンブラージュ以上の複雑さ、そしてそれらから生まれ来るハーモニーで、小諸の土地のテロワールを表現できる可能性があるのではと考えたからです。
現代の一般的なブレンドワインの多くは、「アッサンブラージュ」という方法で、品種毎に収穫、醸造してワインになった状態でブレンドします。一方で「混醸」は、複数品種のぶどうを一緒に搾って発酵させる醸造法です。ル・シエルのワイン造りは、同一区画の同じ日に収穫したぶどうを混醸する「フィールドブレンド」と呼ばれるもので、近年世界的にも再認識されています。
より畑の特徴を引き出すアプローチの一つと考えています。

今回、「日本で、千曲川流域でワインを造る意味、その土地の味の表現」を模索する中で、小諸にシャルドネ、信濃リースリング、ソーヴィニヨン・ブランの3品種の栽培に適した土地を見つけることができました。
また、数十年に及ぶ栽培・醸造の経験から、それぞれの品種の特徴を把握しています。品種の割合は、最終的なワインの個性に影響を与えますので、その畑のぶどうの個性を深く理解していることも重要なポイントです。
「混醸」に取り組む下地が十分に整い、「小諸」という土地の新たな可能性を引き出すことにチャレンジできたのです。

混醸とアッサンブラージュの違い

「アッサンブラージュ」はそれぞれの品種にあったタイミングで収穫し、出来上がったワインを好ましいと思うバランスに調整出来るため、造り手のイメージしたワインに組み立てることが出来ます。一方、人の及ぼす影響は大きく、造り手の好みが出やすいという面もあります。
「混醸」は畑全体のタイミングを見て収穫するため、そこですべてのバランスが決まります。人の及ぼす影響は、その土地、品種を深く理解し畑全体の収穫タイミングを見極めることがほぼと言え、出来上がったワインにはよりテロワールが表現されると考えています。また、混醸にすることで、それぞれの搾った果汁の成分が互いに作用し合い、発酵させた後でブレンドするのとは異なる変化が生まれます。

ル・シエルの畑

小諸ワイナリーの南に位置する自社管理畑で、ワイナリー内にあるシャルドネのトップキュヴェ「ソラリス 小諸 シャルドネ ヴィエイユ・ヴィーニュ」の畑とは道を一本隔てた場所、また、メルローのトップキュヴェ「ソラリス 小諸メルロー」用の区画とも隣接した場所にあります。
標高670~680mに位置したゆるやかな南向き斜面で、土壌は埴壌土(粘土がかなり多いが少し砂も含まれる)です。ここには、ル・シエルに使用した3品種の他にメルローも植えられています。
ワイン名「ル・シエル(Le Ciel)」はフランス語に由来する「空」「天」を意味する言葉で、畑のある「天神」とよばれる地名(小諸市諸字天神、及び小諸市西原字天神前にまたがる)から命名しました。

収穫から醸造

収穫

3品種を同日に収穫します。
畑のそれぞれの品種の熟度の違い(糖・酸のバランス、香り成分の熟度など)を見極めて収穫のタイミングを決めます。この3品種の熟度を見極めることは非常に難しく、永年の経験と日々の観察力が必要とされ、栽培管理の技術があってこそできるワインだと考えています。
ル・シエルは、その年、その日の畑の収穫量そのままの比率で一緒に仕込んでいくので、ヴィンテージによって見せる表情が異なる面白さを持つワインとなるのです。

ヴィンテージ 仕込み日 ぶどうの品種
シャルドネ 信濃リースリング ソーヴィニヨン・ブラン
2020 9月24日 約48% 約33% 約19%
2021 10月7日 約55% 約30% 約15%
2022 10月6日 約46% 約28% 約26%
2023 9月26日 約41% 約44% 約15%

醸造

酸化を抑えるために3品種を混合で全房プレスします。
そうして得られたクリアーな果汁を発酵させることで、それぞれの品種の相互作用、果汁の段階から混ざることで沈殿するもの、溶けやすくなるものがあり、より品種間の調和が取れると考えています。
また、発酵・熟成には容器による影響をおだやかにすることを狙って、450Lの大きめの樽(古樽)とステンレスタンクを併用しています。全体として過度な装飾をしないぶどうの個性を生かした醸造を心がけています。

(3品種を一緒に全て房ごと搾っていく)

ル・シエルの誕生 こぼれ話

ル・シエルのファーストヴィンテージは2020年。
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で感染拡大した年です。日本でも緊急事態宣言が出される等、世の中全体が不安の中にありました。ワインの出荷も少なくなり、ワイナリーが暗い雰囲気に包まれてもいました。そんな時、西畑が小諸ワイナリーのメンバーに、前を向いて新たな挑戦をしよう!と呼びかけ、栽培・醸造チーム全員で取り組んだのが「混醸」のワイン造りです。初めての取り組みはメンバーに明るさと希望をもたらし、エネルギーが湧いてきたといいます。パンデミックの中で誕生したル・シエル。年を重ねての今後の発展が楽しみです。