その土地のテロワールを表現する「ビオロジック栽培」
マンズワインの取り組み
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マンズワインは創業以来、一貫して「日本のぶどうによる日本のワイン造り」に取り組んできました。
ソラリスのブランドが誕生したのは2001年。当時から「世界の銘醸ワインと肩を並べる味わい」を目指し、品質向上のために手をかけられることはすべて行ってきました。その先人たちの努力のおかげで、「味わい」における品質は十分に追い付いてきていると自負しています。
そのベースに立って今、私はどれだけ自分たちの関わっている土地のポテンシャルを引き出してワインに表現できるか、そのために最適な栽培や醸造の方法は何なのかを追求していきたいと考えています。
取り組みの一つとして2010年から、より自然な環境でのぶどうのビオロジック栽培(*)を行い、畑に寄り添った形でのワイン造りに挑戦しています。
ビオロジックワインは生産量が少ないため、あまり多くのお客様に楽しんでいただくことが出来ないのが残念ですが、「ソラリス」シリーズの新しい一面を感じていただけたら嬉しく思います。
小諸ワイナリー 栽培・醸造責任者
西畑 徹平
※ビオロジック栽培:
「オーガニック栽培」「有機栽培」のフランス語。化学的に合成された肥料および農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法です。
土地の味わいをワインに表現するためには、何よりもその土地がより自然に近い形になっていることが理想的です。より自然に近い形の一つは、その土地に本来いるべき虫や微生物が存在し、生物多様性が維持された状態になっていることです。
そのために取り組んでいることの一つがビオロジック栽培です。
ビオロジック栽培では特に細やかな畑の観察と管理が求められますが、上手く生態系のサイクルをまわすことができれば生物多様性が維持された、より自然な環境でのぶどう栽培を行うことができると考えています。
マンズワインの取り組みは2010年に開始されていますが、当時、先駆けてビオロジック栽培に取り組む方々もわずかにいたものの、日本でのビオロジック栽培の実例は多くはありませんでした。「実際にできるのだろうか?」という疑問もあり、小さな一区画で試験的に栽培したのが始まりです。それから10年以上を経て、ビオロジック栽培は小諸ワイナリーの自社管理畑の1/3超までに増えています。
ビオロジック栽培に取り組むことは、栽培者にとってもポジティブな影響があります。
使用できる農薬や資材などに様々な制限があり、問題が発生した際には一般的な農法と同じ対処法を行うことができません。原因と対処法について深く考えることが求められるため、栽培者のぶどうに対する感性レベルが向上し、より畑やぶどうに寄り添った栽培が出来ることに繋がります。栽培担当者たちは「自分たちの栽培技術が上がれば、ワインの品質向上にも繋がる」という想いの下、土地の味を表現するためにはどんな方法があるのだろうかと、日々試行錯誤しています。そして基本的で地道な作業を大切にしながら、ぶどう栽培に取り組んでいます。
それはまた、栽培者自身の心の充実感となり、その充実感が収穫されるぶどうにも伝わると信じています。
今、プロフェッショナルとしてワイン造りに携わる上では、地球環境の未来や地域との繋がりなどワインの品質以外のことも考えていかなければいけません。
ワイン造りとは自然との関わり合いであり、人類の活動によって引き起こされている自然環境の変化を改善することは今を生きる私たちにしかできないことです。
私たちの取り組みが生物多様性を維持しその土地を守ることに繋がり、収穫されるぶどうにより多くの「土地本来の味わい=テロワール」を纏わせることができれば、より多くの喜びが詰まったワインとしてお客様にお届けできると考えます。
畑で働く人、近隣住民の方々、周辺環境への影響を考慮しながら、ワイン造りをより長く続けていくためにビオロジック栽培に取り組んでいきます。
ソラリスのビオロジックワインの畑はワイナリーのすぐ東側に位置し、畑名は地名に由来し「別府」と呼んでいます。
別府は標高約650m、ゆるやかな南向き傾斜、面積は約34aと小さく、土壌は火山灰性粘土土壌から成り立っています。
ぶどうはシャルドネとメルローが植えられ、樹齢は古い樹では25年程度。
小さな川沿いにある谷のような地形は風の通り道になっているため空気がこもらず、ぶどうは理想的な生育条件のもとで熟すことができます。
醸造については他の「ソラリス」シリーズと同様、丁寧な選果を行い、育成中は入念にワインを観察し、状態に応じてタイミングを見計らいながら手を加えます。
他の「ソラリス」シリーズのワインとビオロジックワインで大きく異なる点は、新樽を全く使わないことです。樽からくる香りやタンニンの影響を減らすことで、よりぶどう、そしてそれが育った土地=テロワールをワインに表現することができると考えているためです。
マンズワインのビオロジックワインは、全て国の定める有機JASに適合した方法でぶどう栽培からワイン醸造まで一貫した管理を行い、有機JASの認証を取得しています。
日本を含む世界各国において様々な有機制度基準がある中で、マンズワインでは国際基準に即した「ビオロジックワイン」を造っていきたいという想いがあるためです。
地球環境で考えると私たちの取り組みは小さなことかもしれません。しかし、その小さな積み重ねが未来を創っていくと考えます。そのためには、消費者であるワインラヴァーの皆さんの力が欠かせません。私たちの取り組みを知り、楽しみながら飲んでいただくことが必要なのです。2024年の酷暑のように自然環境の変化に想いを馳せた時など、選択肢の一つとして小諸ワイナリーのビオロジックワインを思い出し、手に取っていただけたら嬉しく思います。