樹齢40年のシャルドネと日本庭園が迎える、小諸ワイナリーの魅力
グラスに注がれたワインを味わうだけでは、気づけないことがたくさんあります。ぶどう畑に吹く風、季節ごとに変わる景色、土の香り。ワイナリーを訪れると、そのワインが生まれた場所の「物語」が、五感を通じて伝わってきます。
造り手との会話からは、ラベルには書かれていないこだわりや想いを知ることができるでしょう。今回は、信州・小諸の地に根付いている「マンズワイン 小諸ワイナリー」の魅力を、たっぷりとお届けします。
小諸ワイナリー最初の見どころはぶどう畑

浅間山のふもとの高原地帯にあり、小諸市街を少し見下ろすゆるやかな丘陵地に位置する小諸ワイナリー。高品質なぶどうを生むエリアとして評価される千曲川ワインバレーの中で、いち早くワイン造りに取り組んできた存在です。
JR小諸駅から町並みを抜け、緩やかな丘陵を越えていくと、次第に信州らしい穏やかな風景が広がり、その先にワイナリーが現れます。長い年月を重ねてきたワイナリーならではの風格が感じられる場所。
入口を入ってまず左手に広がるのはぶどう畑。整然と並ぶ樹々は落ち着いた存在感を漂わせています。ここは樹齢40年を超えるシャルドネの畑。国内にある欧州系ブドウ品種でここまでの樹齢はとても珍しく、このぶどうから造られるのが「ソラリス 小諸 シャルドネ ヴィエイユ・ヴィーニュ」です。高樹齢の樹は幹が太く、深く根を張り、複雑で凝縮した味わいの貴重なワインを生み出します。

苗を植えてすぐに良いワインが生まれるわけではなく、最低でも20年ほどかかるとも言われます。一方で、古樹がどれほど長く良い実をつけ続けるかは、マンズワインにとってこれから先の重要なテーマでもあります。その先を見据え、隣の区画では若いシャルドネの樹が育てられ、次世代の畑づくりも進められています。

樹の上方に目を移すと、支柱に取り付けられた半円形の金属パイプが見えます。1987年にマンズワインが考案した「マンズ・レインカット」と呼ばれる雨よけです。雨が多い日本において、健全で完熟したぶどうを収穫するため、このレインカットは重要な役割を果たしてきました。
32品種が植えられた品種園

シャルドネ畑の隣には「品種園」が広がります。フランスやドイツなどヨーロッパ原産の品種から、マンズワイン独自開発の品種まで、32種類がひと区画で栽培されている、とても貴重な場所です。春から秋までの生育期間には、葉の形やブドウの付き方、早生・晩生の違いによる芽吹きや開花のタイミング等を観察するのも訪問の楽しみになるでしょう。
また別の畑では、気候変動に備え、プチマンサンやヴィオニエなど新しい品種の試験栽培も行っています。長年の研究と選抜を経て、日本の気候でも高品質なワインを生む品種が見極められ、現在の小諸ワイナリーの味わいを形づくっています。
小諸ワイナリーならではの魅力、本格的な日本庭園「万酔園」

入口を入って右手に広がるのは「万酔園」です。庭園に囲まれたシャトーを持つ西欧のワイナリーのように、小諸ワイナリーの敷地内には、約10年をかけて造られた本格的な日本庭園があります。3,000坪の敷地に約170種・1万本もの植栽が施され、滝や池、枯山水、東屋や茶室まで、日本らしい趣、日本文化の真髄を表現しています。
名称は「庭の美しさとワインの魅力に、万人に酔いしれてほしい」という思いに由来し、庭全体で信州の地形や風土を象徴しています。ワインもまたテロワールを映し出すもの。 庭園で感じた自然や季節の空気は、グラスを傾けるひとときに、この土地をより深く感じさせてくれるでしょう。
日本の趣に寄り添う、ぶどうとワインの文化

広い庭園の中でも、とりわけ目を留めたくなるのが、枯山水に沿ってつくられた混植の大刈込です。メインのドウダンツツジは、春に白い花を咲かせ、秋には葉が真っ赤に紅葉するので、まさに白・ロゼ・赤へと移ろうワインの色を表現しています。
その華やかさと枯山水の静けさとの対比がとても印象的な景色になり、紅葉の季節には、とりわけ美しい見どころとなります。
散策を進めると、小諸で7年間を過ごした明治の文豪・島崎藤村の歌碑があります。刻まれているのは、詩集『若菜集』に収められた「秋のうた」。ぶどうや季節のうつろいを詠んだその内容は、ここを歩く時間にふさわしい一篇です。ぜひ足を止めて、味わってみてください。
庭園内には、寄り添う二人がワインを手にした石像も。地域に伝わる道祖神のような役割を持ち、杯を掲げる姿には、ワインがもたらす豊かな世界への願いが込められています。
また足元には、ぶどうの文様を手彫りした敷石がところどころに置かれ、細やかな意匠が目を楽しませてくれます。散策しながらぜひ探してみてください。

樹齢100余年の善光寺ぶどう

万酔園の一角には、樹齢百年を超えるぶどう「善光寺」の古樹が植えられています。別名で「竜眼」の呼称もありますが、「善光寺の鐘の音が聞こえる範囲でよく育つ」と言われてきたことが、その名の由来です。
1967年、のちにマンズワイン3代目社長となる茂木七左衞門が長野市郊外の民家の庭先で偶然、綺麗な薄ピンク色の皮をしたぶどうを発見。この品種に注目した茂木氏は、日本でも美味しいワインが造れる可能性を感じたといいます。
そして調査研究を進める中で、小諸の気候が適していると考え、善光寺ぶどう中心にワイン造りを行う場所として1973年に小諸ワイナリーが設立されました。現在も原木はワイナリーに移植され、静かにその歴史を伝えています。
庭の余韻を深める四阿と茶室

散策路にある四阿(あずまや)では、腰を下ろしてゆっくりと庭園を眺めることができます。軒下に敷かれた”雨落としの石”には、千曲川、犀川、木曽川、天竜川と、長野を流れる四つの川の石を用いていて、細部にまでこだわっています。
散策路の最後には茶室があり、宮大工が三年の歳月をかけて建てた建物が、静かに姿を現します。特別なイベントの際にのみ公開される茶室で、湾曲を描く梁や端正な細部の仕上げ、苔むした庭や石との調和など、日本ならではの奥ゆかしさや美意識が随所に息づいています。
欧州の地下セラーを思わせる空間

万酔園の一角にある階段を下りていくと、そこに広がるのは静かな地下セラー。まるでヨーロッパのシャトーのセラーに足を踏み入れたかのような空気に包まれます。通常は非公開ですが、限定ツアーや収穫祭の際には見学が可能です。
セラーには、時間を重ねたものが静かに残されています。スパークリングワイン造りが手作業で行われていた時代の木製道具「ピュピトル」。そして、1970年代に仕込まれた試醸ワインは、今もなお瓶熟成を続けています。

さらに奥にはVIPルームが設えられ、善光寺ぶどうをかたどった大きなシャンデリアが印象的な空間が広がります。庭園とは異なる趣の中で、このワイナリーのもうひとつの表情に出会えます。
自然の恵みを感じながらのテイスティング

小諸ワイナリーショップでは、専門スタッフによる案内を通してワインの背景や特徴を知りながら味わえる環境が整っており、ここでしか買えないワイナリー限定商品も取り揃えられています。
1階のショップ
ショップでは、ワイナリー限定のソラリスシリーズのバックヴィンテージワインも購入できます。節目となる日の1本を選ぶ場としても利用されています。
ワインサーバーによるテイスティングでは、約8種類のワインを1杯から楽しむことができます。ラインナップは時期によって変わり、来場者が多い時期には特別なワインが提供されることも。
2階のけやきテラス

2階のけやきテラスからは、若いシャルドネ畑を望み、樹々の成長とともに、これからのワインの物語を思い描くことができます。
ここにしかない、ワイン体験を

小諸ワイナリーには、ぶどう栽培からワイン造り、庭園や空間づくりに至るまで、長年にわたって積み重ねられてきた時間と歴史があります。ワインの楽しみ方を広げるさまざまな工夫が随所に施され、ワインを味わう時間を”より豊かな文化”として感じていただきたいという想いが息づいており、実際に訪れることで、ワインが生まれる背景や、この場所が育んできた文化を、より身近に感じていただけるはずです。
ワインとともに、この場所ならではの時間を味わいに、どうぞお気軽にお立ち寄りください。営業時間内は、どなたでも自由にご来場いただけます。
小諸ワイナリーへのご案内・アクセスと営業時間について
■営業時間 4月~11月:9:30~16:30 12月~3月:10:00~16:00
■休業日 4月~11月:無休 12月~3月:火・水曜日定休(祝日は除く)
■お車でお越しの方 上信越自動車道・小諸IC 約5分
■電車でお越しの方 東京駅から北陸新幹線で軽井沢駅まで約60分 軽井沢駅からしなの鉄道で小諸駅まで約25分 小諸駅からタクシーで約10分 ※北陸新幹線 佐久平駅よりよりタクシーで約30分