【コラム】スパークリングワインは造り方で味わいが変わる?
スパークリングワインといえば、グラスの中に無数の泡が立ち昇り、特別な日やお祝いの席を彩る華やかなワインとして世界中で親しまれているのが特長です。
この美しい泡はどのようにして生まれるのでしょうか。今回のコラムでは、スパークリングワインの製法のバリエーションと製法の違いによるワインの個性について詳しくご紹介します。
スパークリングワインの泡はどうやって作られる?
マンズワインは、2026年8月現在、2種類の製法でスパークリングワインを造っています。勝沼ワイナリーの「酵母の泡シリーズ」と、小諸ワイナリーの「ソラリス メトッド・トラディッショネル シリーズ」です。共に酵母の働きによって細やかな泡が生み出されているのが特徴です。
ワイン酵母には、ぶどう果汁の中の糖分をアルコールと二酸化炭素に分解するアルコール発酵という働きがあります。一般的なワイン(スティルワイン)では発酵の際に生成される炭酸ガスは空気中に発散されます。
一方でスパークリングワインでは、ベースとなるワインを密閉した容器の中に入れ、2回目のアルコール発酵を行います。その際生成された二酸化炭素(炭酸ガス)には逃げ場が無く、ワイン中に溶け込むためにワインが発泡性を得るのです。
二酸化炭素をどのようにワインへ閉じ込めるか。その違いが泡立ちや香り、味わいの違いにつながります。
シャルマ方式の製法とは?
まず最初は、酵母の泡シリーズの製法である「シャルマ方式(Méthode Charmat)」について深掘りしていきましょう。最大の特徴は2回目の発酵を大きなタンクの中で行うことです。シャルマという名称は、20世紀初頭にこの製法を完成させたフランス人技術者ウジェーヌ・シャルマから来ています。

シャルマ方式は、以下のようなプロセスで行います。
| 工程 | 内容 |
| ①ベースワインをつくる | ぶどう果汁を発酵させ、ベースとなる非発泡性ワインを造る(一次発酵)。 |
| ②ワインを大型の密閉耐圧タンクに入れる | ベースワインを、シャルマ方式専用の大型密閉耐圧タンクへ移す。 |
| ③密閉耐圧タンク内で二次発酵を行う | 糖分と酵母を加え、タンク内で二次発酵を行う。発酵によって生じた二酸化炭素がワインに溶け込み、発泡性が生まれる。 |
| ④等圧濾過で澱などを取り除く | 発酵後に残る酵母由来の澱を、タンク内と同じ圧力を保ちながら濾過する。 |
| ⑤ドサージュする | 必要に応じて糖分を加え、最終的な味わいを調整する。 |
| ⑥びん詰・打栓する | スパークリングワインを適切な圧力下でびん詰めし、栓をする。 |
シャルマ方式では、密閉した大型タンクの中で二次発酵を行うことで、発生した炭酸ガスをワインに溶け込ませます。
発酵から濾過、びん詰めまで炭酸ガスを逃がさないよう、耐圧設備を用いて圧力を保ちながら作業することが重要です。ドサージュでは甘辛度や味わいのバランスを整えますが、ワインのスタイルによっては行わない場合もあります。
シャルマ方式で造られる世界のワイン

現在、世界中で造られるスパークリングワインの多くはシャルマ方式で造られています。有名なのは、以下の2つが挙げられます。
プロセッコ
イタリア北部ヴェネト州で造られる、世界で最も多く造られているスパークリングワインです。タイプは白とロゼなどがあります。主にグレーラというぶどうから造られ、軽やかな泡、ぶどう由来の果実や花の香り、フルーティーな味わいが持ち味です。なおプロセッコ栽培丘陵群は世界遺産に選ばれています。
ランブルスコ
ランブルスコは、イタリア北部エミリア地方で造られるスパークリングワイン。一般的にはシャルマ方式で造られる、やや甘口で微発泡の赤のタイプが有名です。泡は快活で、赤い果実や花の香り、さわやかな酸・果実味・やさしいタンニンが魅力です。
マンズワインのスパークリング「酵母の泡」の魅力

シャルマ方式は比較的大規模な製造施設が必要になりますが、マンズワインはシャルマ方式の設備を持つ日本では数少ないワイナリーのひとつです。
ぶどう品種は日本固有種の甲州や龍眼、マスカット・ベーリーAを使用。ぶどうが持つ繊細でフレッシュな特性を活かし、品種由来の果実や花のアロマが楽しめます。
タンク内で二次発酵を終えた後も、酵母由来の澱と一緒に一定期間ゆっくりと時間をかけて育成を行うことで、酵母によるきめ細かい泡と、クリーンでフレッシュな味わいの両立を実現しています。
ラインアップは、白、ロゼ、赤、味わいは辛口からやや甘口と幅広く、毎日の食卓から休日の乾杯まで様々にお楽しみいただけます。
酵母の泡シリーズはこちら
トラディショナル方式の製法とは?
次は、ソラリス メトッド・トラディッショネル シリーズの製法である「トラディショナル方式(Méthode traditionnelle)」について紹介します。
トラディショナル方式は、二次発酵から熟成までを一本一本のびんの中で行う製法です。びん内で発生した二酸化炭素がワインに溶け込むことで、きめ細かくクリーミーな泡が生まれます。

| 工程 | 内容 |
| ①ベースワインをつくる | ぶどう果汁を発酵させ、ベースとなる非発泡性ワインを造る(一次発酵)。 |
| ②ワインをびん詰めする | ベースワインに糖分と酵母を加え(ティラージュ)、びんに詰めて王冠で栓をする。 |
| ③びん内で二次発酵を行う | びんの中で二次発酵を行い、発酵によって生じた二酸化炭素をワインに溶け込ませる。 |
| ④びん内で熟成させる | 二次発酵後に生じた酵母由来の澱とワインを接触させながら、長期間熟成させる。 |
| ⑤デゴルジュマン(澱引き)する | びん口に集めた澱を凍結し、びん内部の圧力を利用して取り除く。 |
| ⑥ドサージュ・打栓する | 必要に応じて糖分を加えて味わいを調整し、コルクで栓をしてワイヤーで固定する。 |
また、二次発酵後に生じる酵母由来の澱と長期間接触させることで、ブリオッシュやトースト、ナッツを思わせる香りや、旨味、複雑さが引き出されます。
熟成後は澱を取り除き、必要に応じてドサージュを行うことで、甘辛度や味わいのバランスを整えます。手間と時間を要することから、比較的高価格帯のスパークリングワインに多く採用されています。
トラディショナル方式で造られる世界のワイン

手間と時間をかけたトラディショナル方式で造られたスパークリングには、世界的に有名な銘柄がいくつもあります。
シャンパーニュ
シャンパーニュはフランス北東部シャンパーニュ地方で造られる、トラディショナル方式スパークリングワインの代名詞。主にシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエで造られ、白とロゼのスタイルがあります。
びん内熟成期間はノンヴィンテージで15ヶ月以上、ヴィンテージでは36ヶ月以上で、きめ細かく持続する泡、柑橘や白い花に加え酵母由来のブリオッシュやナッツの香り、高い酸・クリーミーな質感・長い余韻が持ち味です。
カバ
カバは、スペインのカタルーニャを中心に、主にスペイン固有の白ぶどう品種を使って造られるスパークリングワインです。手ごろなものから高級なものまで幅広いスタイルがあります。びん内熟成期間は9ヶ月以上、レゼルバでは18ヶ月以上です。
熟成期間の短いカバは柑橘や花の香り、爽やかで軽快な味わいですが、長期熟成品では泡がクリーミーになり、パン・スパイスなどの複雑さが加わります。
フランチャコルタ
フランチャコルタはイタリア北部、ロンバルディア州で造られる高級スパークリングワインです。白、ロゼの他に、白品種のみで低びん内圧に仕上げるサテン(Satèn)があります。びん内熟成期間は18ヶ月以上、ヴィンテージ(Millesimato)では30ヶ月以上です。持続する細かい泡、果実や白い花の香り、豊かな酸、旨味、厚みが調和した味わいが魅力です。
マンズワイン「ソラリス 千曲川 シャルドネ メトッド・トラディッショネル ブリュット・ナチュール 2018 」 の魅力

マンズワインは1990年代からトラディショナル方式でのスパークリングワイン造りに取り組んできました。
びん内で酵母由来の澱と一緒に熟成させることで、酵母由来の香り、厚みのある味わいが生まれます。2018年ヴィンテージでは約60ヶ月のびん内熟成を行いました。きめ細やかな酵母由来の泡、リンゴや花の香りとともに広がるブリオッシュやアーモンドの香ばしさ、シャープな酸と共に余韻まで続く旨味が楽しめます。
マンズワインが40年以上にわたり栽培を続けるシャルドネの適地、小諸市の契約栽培畑で育てられたぶどう。ぶどう本来のピュアな味わいを活かすため、澱を取り除いた後も糖分を加えない、ブリュット・ナチュールに仕上げています。
トラディショナル方式ではデゴルジュマン(澱引き)の際に空気に触れると、ワインの酸化熟成が始まります。マンズワインでは「デゴルジュマンしたらすぐ飲んで欲しい」との思いから出荷状況に合わせて小ロットかつ手作業で行い、その日時をびんに印字しています。
ソラリス 千曲川 シャルドネ メトッド・トラディッショネル ブリュット・ナチュール 2018はこちら
まとめ|スパークリングワインの製法の違いがもたらすもの
今回はスパークリングワインについて深掘りしました。スパークリングワインの製法には、シャルマ方式とトラディショナル方式の2つの製法があります。同じスパークリングでも、製法によってワインの外観、香り、味わいやキャラクターなども異なるのです。
フレッシュな果実味を楽しみたいならシャルマ方式、熟成由来の複雑さを味わいたいならトラディショナル方式というように、造り方を知ることでワイン選びはさらに楽しくなります。ぜひ、それぞれの製法による違いを飲み比べながら体験してみてください。