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島崎大という造り手|地道に積み重ねる、オーセンティックなワイン造り~後編~

島崎大という造り手|地道に積み重ねる、オーセンティックなワイン造り~後編~

マンズワインの代表取締役社長・島崎大(以下、島崎)は、約35年にわたってワイン醸造の現場に立ってきた造り手です。その醸造家としての歩みは「どうすれば日本で本当に良いワインを造れるのか」という問いに向き合い続けてきた軌跡でした。

前編”子どもの頃の憧れが生涯かけての仕事になるまで”では、島崎がたどってきたワイン造りの歩みを紐解きました。後編ではその歩みの先に紡ぎ上げた、島崎のワイン造りにおける思想に迫ります。

島崎にとってのワイン哲学|目指すワインの姿・かたち

ーーどのようなワインを目指していますか?

「”人を感動させられるワイン”です。飲んだ人の心を動かすワインを造りたい、と取り組んできました」

島崎にとっての「人を感動させられるワイン」とはどのようなものか。まず譲れないことは「造られたワインに技術的な欠陥が無いこと」です。たとえ個性や特徴があっても、品質に問題があるワインは受け入れられないと語ります。

その上で、ワインの香りと味わいに複雑さ、深み、奥行きがあることも重要です。単にシンプルな味わいでないだけにとどまらず、香りであれば「一度嗅いだだけでは捉えきれず、もう一度香りを採りたくなる」ことを大切にしているといいます。

口に含めば一つの液体なのにたくさんの層が感じられ、次から次へとさまざまな香りや味わいが尽きない。そして全体としてもまとまりがあり、バランスが取れているのに個々の要素が際立っている状態が、島崎の理想とするワインです。

「いつまでもこのワインと触れ合っていたいと感じられる素晴らしいワインを造りたい」と島崎は語ります。

ぶどうが持つポテンシャルを最大限に──ワイン造りの思想

ーーワイン造りにおいて大切にしていることは?

「自分達が造りたいワインの”芯”をしっかりと持ち、長期的な視点でそれに沿ったワイン造りをしていくことですね。ワイン造りは形を成すまでにすごく時間のかかる事業なので、その時々の流行りに安易に流されず、自分達の目指す姿を見失わないことが大切です」

ーー自身のワイン造りの「芯」はどこにありますか?

「”ぶどうの持っているポテンシャルを最大限に引き出すワインを造る”という点です。しっかり熟した健全なぶどうが持っている力を、可能な限り損なわずにワインにするのです。自分が造りたいワインのスタイルや味わいを決めて醸造的に作りこむのは、私のやり方ではありません」

例えばソラリスの立ち上げ時、島崎はまず良質なぶどうを選び出すことに注力しました。トップレンジの黒ぶどうの仕込みにおいて、果梗と不良果を徹底的に取り除くために除梗機の使用を中止しました。代わりに全て手作業でぶどう果粒を梗から外し、傷んだ果粒を一粒ずつ取り除いたのです。

その結果としてぶどうの品質が良くなり、そのぶどうで造ったワインの質も目に見えて良くなったと島崎は語ります。

島崎のワイン造りの思想は、まさにマンズワインが時間をかけて築き上げ、継承してきたワイン造りの根幹だといえるでしょう。マンズワインの”芯”は、良いぶどうから良いワインを生み出す、ぶどう栽培と醸造が一体となったワイン造りなのです。

ワイン造りのアプローチとして、最も大切にしていること

ぶどうのポテンシャルを引き出すワイン造り。島崎は「人がワイン造りに介入するタイミングをいかにベストに出来るか」を重視しています。

「しっかりとぶどうの変化を観察しながら、どのように人が関わるのが一番いい結果になるのか。その最適解の積み重ねが、そのぶどうから造られる最良のワインに結実するのではないかと考えています」

つまり、造り手が恣意的に、あるいは狙いを持ってぶどうやワインと関わるのではなく、栽培・醸造の過程の中で本当に必要なことだけを必要なタイミングで行うこと。ぶどうが本来持っている力を造り手が歪めることなく、そのままワインに引き継ぐというアプローチです。

具体的には収穫フェーズ。島崎は「人が、適度にぶどうが熟したタイミングを逃さない」ことを重視します。

ぶどうは、年ごとの気温や雨の降り方、日照、風などの影響で同じ畑であっても熟すタイミングは変わってきます。そのため、それぞれのぶどうがしっかり熟したタイミングを人が見極め、収穫しなければなりません。

ソラリスでは畑ごと、または畑をさらに細かい区画に分けてぶどうの成熟度合いをサンプリングやテイスティングで観察しています。それにより、しっかり熟した最適なタイミングで区画別に収穫し、小型タンクに仕込んでいます。マンズワインでは人がベストなタイミングで介入し、ぶどうのポテンシャルを引き出すようにしているのです。

オーセンティックなワイン造り

ぶどうのポテンシャルを引き出すワイン造りにおいて、島崎にとってもうひとつのキーワードが「オーセンティック」です。

日本語では「正統な」「本物の」などと訳されますが、島崎のワイン造りにおいてのオーセンティックとは、栽培・醸造で「やるべきことをしっかりやる」ことであり、逆に「してはならないことはしない」ことです。

例えば醸造においては、培養酵母、タンクの素材や形状、発酵助剤、抽出の温度・期間、樽など、造り手が選択できるさまざまな工程や資材が存在します。しかし、いたずらに流行を追い、ぶどうの品質を顧みずにこうした選択を行うことは、ぶどうのポテンシャルを歪めることに繋がりかねません。

オーセンティックなワインは、長い年月をかけて築き上げられてきたさまざまな技術の中から造り手がぶどうを注意深く観察し、みずからの経験と信念を注ぎ込んで適切に選び、使っていくことで生まれます。

改良を地道に積み重ねる中で

ーーワイン造りの実践で得られたことは?

「ワイン造りは1年に1度しかできません。その意味で前の年に学んだことをしっかりフィードバックして、翌年のワイン造りにそれを確実に行うことが大切だと気づきました」

毎年の改良は小さいものかもしれません。かつ、得られる成果も少ないかもしれません。しかしそれが10年、20年と積み重ねられれば、最後に得られる成果は大きなものになるだろうと島崎は語ります。

ソラリスの17年に及ぶワイン造りで、島崎は地道な改良を実践してきました。例えばソラリスの立ち上げ間もない2002年。天候に恵まれたグレート・ヴィンテージであり、ソラリスのぶどうの質、ワインの出来ともに島崎の記憶に残るほど良かったものの、最近のソラリスの方が品質は高いと島崎は言います。それは、ぶどうとともに毎年の小さな改良の積み重ねによって、ソラリスの品質が向上し続けているからです。

次世代へ継承していきたいワイン造りとは

ーーマンズワインのワイン造りとは?

「マンズワインのワイン造りは”実直でオーセンティックなもの”だと思っています。ですから次の世代もそこの部分は変えずに、しっかりした品質のワインを造った上で、+αの部分を加えて欲しいと考えています」

造り手としては、かなり自由にやりたいことをやらせてもらったと自らを振り返る島崎。次世代の造り手にも自分のやりたいことが出来る環境を用意しています。

ワイン造りは、絶えず進歩しています。世界のワイン市場のトレンド変化や最新の栽培・醸造の研究成果を学び、気候変動などによる栽培リスクを考慮することは大切です。

これらを踏まえたうえで、マンズワインが築き上げてきたワイン造りの根幹である”実直でオーセンティックなものづくり”、ぶどう栽培と醸造が一体となったワイン造りを、次世代へと受け継いでいきたいと島崎は考えています。マンズワインのワイン造りはまだまだ道半ば。自分達のワイン造りを見失わずに経験を積み重ね、一つ一つ改良を続けていくことが、世界の高みを目指すワインへとつながる道程なのです。

まとめ|ぶどうのポテンシャルを最大限に引き出すことこそ、マンズワインの哲学

島崎の造り手としての歩みを紹介した前編に続き、後編ではそのワイン造りの思想に迫りました。

島崎が目指すのは「人を感動させられるワイン」です。そのためには技術的欠陥のない品質を前提に、複雑さや深み、奥行きを備え、飲み手が何度も向き合いたくなる味わいを追求します。

ワイン造りの根幹にあるのは「ぶどうのポテンシャルを最大限に引き出す」こと。過剰な人為的介入を避け、必要なことを最適なタイミングで行うオーセンティックなものづくりを重視しています。また、毎年の小さな改良の積み重ねによる品質向上の実践はソラリスの進化を支えてきました。

ぶどう栽培と醸造が一体になった実直なワイン造り。それを次世代へ継承することが島崎の目指す未来です。現在のソラリスの栽培・醸造責任者である西畑徹平は、島崎のもとで研鑽を積んだのち、フランス留学を経て、しっかりと島崎のワイン造りを受け継ぎながら、さらに発展させようとしています。

マンズワインのワイン造りは5年先、10年先どのようになっていくのか。次の機会では現在・未来の造り手をご紹介します。

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